大判例

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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)879号 判決 1950年8月21日

被告人

長屋七夫

外一名

主文

原判決を破棄する。

被告人長屋七夫を罰金一万円に被告人折戸勳を罰金二万円に各処する。

右罰金を完納することができないときは金三百円を一日に換算した期間当該被告人を夫々労役場に留置する。

押收の小豆換価金一万二千二百八円三十銭を沒收する。

原審並びに当審における訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。

理由

弁護人松浦是及び被告人等の各提出に係る控訴趣意は後記の通りであつて検察官は本件控訴は理由のないものとしてその棄却を求めた。

仍て按ずるに原判決によれば、原審は後記と同一の事実を認定した上食糧管理法、同施行令、同施行規則を適用して被告人等を各罰金三万円に処したものであるが原審挙示の証拠によれば右の事実は優にこれを認めるところであり、且つ右認定を左右するに足るべき資料は存しない。而して該認定事実に対し食糧管理法等を適用したことは固より正当であつて、特に一件記録中その適用を除外すべき事情も認め得ないから各論旨中事実誤認乃至食糧管理法の適用を不当なりとする点は何れも採用の限りでない。

然しながら原審で取調べられた証拠によれば、本件犯行について被告人折戸勳は積極的主導的地位にあつたものであり、被告人長屋七夫は法律上共同正犯の責任はこれを免れ得ないにしても消極的な立場にあつたことが認められるので、被告人両名に対する量刑は当然差等があるべきであり、且つ又本件小豆の入手関係や本件犯行の態様からすれば被告人両名に対する罰金三万円は妥当を欠くと思われるのでこの点の論旨は理由あり、原判決は刑事訴訟法第三百八十一條、第三百九十七條によつて破棄を免れない。

而して本件は一件記録及び原審で取調べられた証拠によつて直ちに当審で判決し得ると認められるから同法第四百條但書に則つて更に判決する次第である。

(事実)

被告人両名は共謀の上法定の除外事由がないのに、

一、昭和二十四年十一月十四日頃小豆約一石五斗を岐阜縣揖斐郡揖斐町大字三輪長屋七夫方から同縣羽島郡笠松町近藤菓子店まで輸送し、

二、同月二十四日頃小豆約二石四斗を同縣揖斐郡坂内村今枝重太郎方から同縣同郡揖斐町地内まで輸送したものである。(以下省略)

(被告人長屋七夫の控訴趣意)

不肖私は折戸勳氏と小学校時代からの友達で有ります。

同級生の関係から無理に進められるままに折戸氏について行きました。絶対悪意から致したのでは有りません。警察署にて友の友情から責任は全部取りましたが、事実はこの調書とは違い小豆の売買交渉も全部折戸氏が行われ、私はそばでついて歩いただけです。

妻はその時病気でした為、私からも折戸氏に再三断り妻も再三再四断りましたが、余りの折戸氏の進めに断りきれずついて行きました。

絶対悪意からしたのでは有りません。なお今後この様な行動はたとい友情とは申せ絶対ついて歩くなど致しません故、何卒この点御諒承下さいまして罪を軽くして戴く様伏して御願い申します。

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